修了制作 第1位
りんごの森 14年度修了制作より
りんご内コンペ 得票数第1位は、
ほりー(上田染谷丘高校)の【Preferita(プレフェリッタ)】デス!
最初におさらい
◆ 修了制作課題の内容
「日常の中の“ちょっとひっかかること”をデザインで解決してみよう!」
◇ 条件:
・プロトタイプの制作
・製品及び使用イメージ写真の撮影
・B2プレゼンボードの制作(枚数自由)
・プレゼンテーション(3分)
さて、今回ほりーが提案してくれたのは、
”トクベツをさらにトクベツに”をコンセプトに考案された“飾る収納”プロダクトです。
ほりーが先ず着眼したのはココ↓
アクセサリーなどの小物類コーナーって、
ついついこうゴチャッとなりがちですよね;
でもアクセサリーって本来は、誰かにプレゼントされたり、自分で自分へのご褒美に買ったり、と
“トクベツな存在”なはずなんですよね。
でもそれが、雑多に“日常の中に埋もれている”。
そしてそれを目にすると、「なんかちょっとざんねんな気持ち」がする。
これをデザインで解決してみよう!というのが、今回のほりーの試みです。
“トクベツ”なものを“トクベツ”なものとして収納できたらいいのにな。
ここから始まったほりーのデザイン。
さぁ、どんなところへ帰結したのでしょうか…
では見ていきましょう。
【飾り棚 Preferita(プレフェリッタ) 】
”トクベツをさらにトクベツに”
使い方は簡単。
この、「額」をモチーフにデザインされた【Preferita(プレフェリッタ)】に、文字通りアクセサリーを飾ります。
日常に埋もれていた“本来トクベツなはず”のアクセサリーが、「額に納めて壁に飾る」という行為によって、より“トクベツな存在”に見えてきましたね。ほりーの考えたコンセプト通りになっています。
white×matte silver
black×white
今回のほりーの提案は、
ほりーがやりたかったことがストレートに伝わる上に、問題点も鮮やかに解決されています。
プロトタイプのクオリティも及第点。
目指していた“やり過ぎ感のないスマートなエレガントさ”も
額縁の形やカラーバリエなどのヴィジュアル面を“モダン”方向に振り、形を少しずつシンプルに削ぎ落として行くことで実現させています。
素材はウレタンを想定し、
構造も、飾るものに合わせて掛ける部分の位置や棚板の位置をカスタマイズできる仕様です。
2パターンのカラーバリエに加え、その中にもサイズと絵柄違いを4種類。しかもそれをちゃんとシリーズとして一貫性のあるデザインに落とし込み、きちっと製品としてデザインしてきました。
その手腕は実におみごと!
そして何より単純に、
『あったら欲しい!』。
たくさんの人が、ほりーのプロトタイプを見て、この言葉を口にしました。
それってつまり、大成功ってことだと思うのです。
しかも着眼点としておもしろいなと思うのは、
さぁどんな風に解決しようか、そう思ったほりーが、
『トクベツなアクセサリーでも、毎日それを着けているわけじゃない、むしろ着けてない時間の方が多いかも・・・?』
ここを発想の足がかりにしている点です。
そして『じゃあその時間だってトクベツに演出したい!』
そんな風に構想を進めていきました。
わたしたちが使う多くの物は、
実は使っている時間よりも、“使われるのを待っている時間”の方が長いものが多くあります。
プロダクト製品のような道具は、特にその傾向が高いでしょう。
これは、掃除機なんかをイメージしていただくと、すぐに想像がつくはずです。
使っている時間よりも、使っていない時間の方が、圧倒的に長い。
けれど、生活空間のどこかには、いつでも置いておかなければならないわけです。
ですから使い方だけでなく、使われていない時のことも、当然考えてデザインしなければなりません。
そういう意味でも、プロダクトデザイン志望のほりーが、
今回ここに意識を向けたことを、とても興味深く感じました。
そしてもうひとつ、
何かモノをデザインしようとした時、
普通最初は、その“モノ”だけに意識が集中しがちです。
「形をどうしよう、色をどうしよう、素材は何がいいかな」と。
もちろん、それは当然大事なわけですが、
その作ろうとしている“モノ”の向こう側に、使う人が居ることを忘れてしまっては、元も子もないわけです。
今回ほりーが、極めて私的な自分の身の回りの事象からスタートして、
使う人のこと、もっと言うと、使う人の“使う時の気持ち”を丁寧に掬い上げていることは、
本当に見事だと思うのです。
使う人にとって“本来トクベツなもの”たちが、額に収まって飾られていたら、
ごちゃっと容器に入れられている時よりも“トクベツ感”が出るだろうナ。
毎日、大スキなモノがキレイに飾られているのを目にできたら、きっとうれしいよな。
額が並んだ壁は、その人の部屋の雰囲気もきっと変えるだろうな。
昨日までの“いつもの部屋”が、ちょっとだけ特別な空間に変わるかもしれない。
そんな“コト”が起こるように“モノ”をデザインしたい。
デザインしよう。
そういった一連のほりーのデザインと人への真摯な姿勢は、
彼女が作って没にした本当にたくさんのアイデアと“プロトのプロト”からも窺えます。
(プロトのプロト=試作品の試作品)
今回の修了制作の制作期間で、試作した物の数が一番多かったのもホリーでした。
そしてそれが、見事に結果につながりました。
ちなみに、“Preferita”はイタリア語で「好き」という意味だそうです。
トクベツなものをさらに「好き」になってほしいナという
ほりーの想いが感じられるネーミングですね。
どうです?これ、女子高生が考えたんです。
りんごの森っコ、なかなかやるでしょ?笑
受講生によく言うのは、と、いうよりも、卒業するまでに叩き込むのは(笑)、
どんなにいいアイデアがみんなの中にあっても、
「こういうのを作りたい」とか言うだけなら誰にでもできるんだよ。
だから、「これ作ってみたんですけど、どうですか?」
アイデアをこの段階に持って行かないと、ここから先は誰もみんなのアイデアに耳を傾けてはくれないよ。ということです。
だからとりあえずパパッと“へなちょこプロト”を作ってごらん。
イベント企画なら、“へなちょこ企画書”でもいい。
それを複数種類作って、感想を人に聞いてごらん。
人が何をおもしろいと思うのかなんて、実際聞かなきゃわからないんだから、
何人もに聞いてみてフィードバックをもらって手直しするのが手っ取り早いよ。
例えそこで酷評されたって、また作り直せばいいんだし、
「試してみたけどダメだった」っていう失敗は、
「やったら大成功する(した)かも」なんていう希望的観測や希望的回顧、もとい甘酸っぱい後悔なんかよりもずっと“強い”よ。
だって失敗は、“仮説”じゃなくて“事実”だから。
失敗したっていう事実は、成功するには別ルートなんだなっていう気づきを与えてくれるし、そこには学びしかないとも言える。
だから怖がらずに、叩き台になる“へなちょこプロト”をサクッと作って人に見せちゃいな。
と、そんなことを、受講生達に何度も言ったり、やらせたりするわけです。
そしてこのことが伝わって、体験として理解して身につくようにと、
年間をとおして中高校生に無理難題を押し付けていきます。笑
だってわたしは、信じていますから。
彼らはいずれ、大学在学期間で学んだことを生かして、社会に出る時にはちゃんとクリエイティブ業界に着地する。と。(←あえて大学で学んだことを生かして、とは言いません。なぜなら、それだけでは不十分だからです。)
そしてそうやって社会で活躍していく卒業生達を、これまでも見てきました。
ですからわたしは、教室に通う中高生たちを受験生扱いはしません。
クリエイターとしてどうあるべきか、と、そこのところで彼らと話をしています。
そして3月の年度末に、みんなの修了課題のプレゼンテーションを見て、ひとりひとりそれぞれの成長を感じました。
そしてほりー、
今回の1位はまぐれなんかじゃなく、実力。
例えいつも努力が報われるわけじゃないと知っていても、
報われるまで地味な努力を続けられた自分をこれからも信じて!
ただし、たとえプロダクトデザイン専攻でも、タイポグラフィーとレイアウトデザインの勉強はすること!プレゼンボードも重要な要素だよ。特に2枚目のデザインされていない余白となんとなく書いたっていう印象の文字組ね。^^;
とはいえ、よくやった!おつかれさん!
今後の活躍を期待してマス!
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